妖怪の妻になりました
 ずるり。肩から着物が落ちた。彼がいささか乱暴な手つきで彼の着物の帯を緩める。その目がぎらぎらとした色をしている気がした。

 たくましい腕で私を逃がさないようにしながら、青行燈さんは少し掠れた声で言う。

「本当はな、少し嫉妬もしたんだ」
「え……」

 彼の指が優しく私の首元をなぞる。そのまま耳をくすぐられるように撫でられて、じれったい感覚に肩が跳ねた。

 彼の胸にすがると、優しく抱きとめて頭を撫でてくれた。そのまま、頭上から声が降ってくる。

「俺以外の匂いが君からするのは癪だ」

 ふと、九尾さんがそんな事をしていたような、と思い出そうとしてやめた。こんな時彼以外のことを考えるのは不躾だ。それに、そんな余裕もない。

 そういえば。彼は元々、嫉妬に狂う女とも伝わる妖だったと聞いたことがあった気がする。

「青行燈、さん」

 見上げた彼の、海のような色の目が私を射抜いた。何を考えているかはわからない。

「だから……あぁ、でも、加減はするさ」




【終わり】
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