妖怪の妻になりました
「茶を入れよう」
「そんな、私が」
「いいんだ」

 青い炎が通う不思議な台所に向けて、彼が立ち上がった。ただ待っているのは申し訳なくて、私は布団を畳むべく立ちあがる。そうだ、着替えもしなくては。

 タンスの中には、どうやってか彼が用意してくれた着物がこれでもかと詰まっている。

 お揃いの青い着物を手に取ると、自然と笑みがこぼれた。こういう時、青行燈さんの愛をひしひしと感じられる気がするのだ。

 もそもそと脱いだ着物を畳んでいると、背後から嬉しそうな声がした。

「ああ、着替えたのか。よく似合っている」
「ありがとう。あなたの見立てがいいから」
「愛おしい君には、ついつい何でも与えたくなるのさ」

 私の前に湯のみが二つ乗ったお盆を置いて、青行燈は眉を下げて艶っぽい顔をした。

 こちらに伸びてきた手がするりと頬を撫でる。ずるい手つきだった。

 と、窓の外からばさばさと激しい羽音がする。香りの良い湯気をゆらめかせる湯呑みを持ったまま、彼が言った。

「今日は化け烏が騒がしいな」
「うん、すごい音」
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