妖怪の妻になりました
 青行燈さんが言うには、人と人ならざるものの世界はほんのちょっぴり「ずれている」らしい。

 近しいところにありながらも交わることなく、本来人は怪異を知覚できない。だけど、たまに私のような例外が生まれてしまう。

 現にこうして妖怪である彼に触れることができるし、問題なく言葉も交わせる。幼い頃に物の怪と人の区別が付かずに困ったことこそあれど、今まで生きてきて「視える」ことで不自由があったことは無い。

 そんなことを、青行燈さんの入れてくれたお茶を口に入れながら、まだ起きたばかりで働かない頭でぼんやり考える。

 早起き……というか、夜中眠っているのかも定かでない彼。たまに百物語に呼ばれているらしいけれど、私にはよくわからない。

 そんな青行燈さんが、青い瞳でじっと外に見える木々を見つめていた。やがて、真剣な顔の彼が口を開く。

「お嬢ちゃん、今日は留守番を頼む」
「……珍しいのね」

(普段なら、私を置いてどこかに行くことは滅多にないのに)
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