妖怪の妻になりました
 散歩も生活のための買い物も、彼はいつも手を引いて連れていってくれる。

 私が首を傾げると、彼は神妙に頷く。

「ああ、少し会ってこなければならない奴がいるんだ」
「まあ」
「烏天狗に用がある」

 そうなのか。騒ぐ烏たちと関係があるのだろうか。まぁ、彼が言うなら従うまでだ。

 湯呑みを置いて立ち上がった青行燈さんは、心配そうな顔で私の髪を一房手に取った。そのままそっと口付けられる。

「すぐ帰る、安心してくれ。……誰も来ないと思うが、もし何かあってもよっぽどでない限り出なくていい」
「はい」

 ……多少過保護だけれど、まあ仕方ない。

 思えば、私がこの家で一人になったことなんて数える程しか無かった気がする。多分、心配性なのだ。最近は彼のそんな所も愛おしい。
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