妖怪の妻になりました
 引き戸を恐る恐るカラリと開ける。そこには、二人の妖が立っていた。

 一人は口をへの字に曲げ、黒い翼を背中ではためかせている。そして、もう一人はあまりにもわかりやすい狐の耳と尾を揺らしながら伏し目がちにこちらを見ていた。彼ら、天狗と化け狐だ。

 私の姿を見た妖たちが、ぽっかりと口を開けて互いに顔を見合わせる。

 ……気まずい…どうしていいのか分からず、ただ瞬きを繰り返す。

 静かな時間がすこしばかりあったあと、天狗の方が合点がいったと言わんばかりに口を開いた。

「あの……」
「あっ、もしかして君が青行燈のお嫁さんか」

 その言葉に頷くと、天狗さんと狐さんが目配せしあった。

(……私のこと、知っているんだ。彼が話したのかしら?)
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