幼なじみマリアージュ～偽装のはずが、エリートパイロットの溺愛が開始されました～

「草壁…顔見たコトないのか？」

「え、あ…はい…」

「・・・葵と莉緒は元気だ・・」
宇佐美社長の低い声が廊下に響く。
「そうですか…それを訊いて安心しました…」

二人は一言交わしただけで無言になった。

この二人のぎこちない雰囲気。

俺は二人の様子を心配そうに見ていた柏原さんと目を合わせる。


「先月リニューアルしたばかりの大浴場の浸かり心地はどうでした？水瀬さん」
居心地の悪い雰囲気を一掃しようと柏原さんが口を開く。
「あ…とっても良かったですよ…なぁー…草壁」

「あ、はい…」

「柏原…俺は先に行くぞ…」

宇佐美社長はさっさと大浴場の暖簾を潜ってしまった。

「ウチの社長はテレ屋だから…心の中では水瀬さんにとっても感謝しているんですよ…」

柏原さんが先に姿を消した宇佐美社長のフォローをする。

「…俺は別に感謝されるようなコトしてませんよ…従兄として…葵と莉緒ちゃんのお世話をしただけです」

「では…俺も失礼します…」

柏原さんも宇佐美社長を追って行ってしまった。