社長さんの溺愛は、可愛いパン屋さんのチョココロネのお味⁉︎
(う〜。くるみちゃんっ! 今日はそれ、めっちゃ毒じゃわぁー)

 なんて、自分を抱きしめている実篤(こいびと)が必死に本能と闘いながらソワついているだなんて、天然無自覚小悪魔のくるみは(つゆ)ほども思っていない。

実篤(さねあつ)さん、ええ匂い」

 うっとりとつぶやいて、スリスリと額を実篤の胸元に擦り寄せてくる。

(ちょっ、待っ! ええ匂いなんはくるみちゃんの方じゃって!)

 気持ち下半身をくるみの身体から離すように後ろに引いたら「何で離れるん? 寒いじゃ?」と聞いてくるとか、マジか!と思った実篤だ。

(勃っちょるんがバレんようによ!)

 なんて直球、今のくるみに言えるはずがないではないか。

「ちょっと……いま下の方〝(さわ)り〟があるけん」

 古風な言い回しで誤魔化してみたけれど、くるみに可愛い顔でキョトンと見上げられてノックアウト寸前の実篤だ。

(わ、話題っ。なんか違う話にして気持ちを切り替えんとっ)

 慌ててそう思った実篤は、「そっ、そういえば同窓会っ。結局どうするん?」と宙ぶらりんになってしまった話を蒸し返すことにした。
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