社長さんの溺愛は、可愛いパン屋さんのチョココロネのお味⁉︎
 病院に着いてみると、熱がある場合は事前に受け付けまで申し出るように、と病院入口に貼り紙がしてあった。

 車の中から「体温は測っていないんですが、おそらく――」と電話してみたら、そのまま車内で待機するようにと指示があって、待合室までは入れなかった実篤(さねあつ)だ。

(ま、インフルの時期じゃしなぁ〜)

 ぼんやりした頭でそんなことを思って、〝もしかしたら〟と吐息が漏れる。

 この身体のだるさと関節痛、そうして徐々に強まっている悪寒に、実篤はイヤな予感しかしないのだ。

(明日は待ちに待ったイヴじゃのに)

 例えインフルエンザじゃないにしても、このまま回復しなければくるみに会わせる顔がないのは確かだ。

(くるみちゃんに感染(うつ)すんはイヤじゃしのぅ)

 思えば実篤、子供の頃からここぞという時には体調を崩していたような気がする。
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