社長さんの溺愛は、可愛いパン屋さんのチョココロネのお味⁉︎
(俺、幼稚園生活最後のお別れ遠足も、小一の時の初めての遠足も……果ては学校生活の集大成修学旅行もっ! みんなみんな体調不良でことごとくダメになったんじゃったぁぁぁ!)

 修学旅行に至っては中学も高校も行けていない。

 よくよく考えてみたら――いや考えなくても――大学仲間との卒業旅行も自分だけダウンして行けんかったんじゃった、と気がついた実篤(さねあつ)だ。


 そんな、普段は忘れているような黒歴史の数々を思い出してしまったのは、身体が弱っている証拠だろうか。

(あーん、くるみちゃんとの初めてのクリスマス、俺、めちゃくちゃ(ぶちくそ)楽しみにしちょったのに!)

 やはり、そのことを考えるとソワソワして夜も眠れなくなるぐらい楽しみにしていたのがいけなかったんだろうか。

 でも、大好きなくるみとの初めてのクリスマスを楽しみにしないなんて有り得ないではないか。

「はぁ〜」

 思わず盛大な溜め息が漏れたのも致し方あるまい。


 と、手にしていた携帯が鳴って、病院のスタッフに裏口から中に入るよう指示された実篤だ。

 その頃には本格的に体調が悪くなってきていた実篤は、半ば身体を引きずるようにして指示に従った。
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