社長さんの溺愛は、可愛いパン屋さんのチョココロネのお味⁉︎
 当たり障りなく「もしあてが外れたら言うて? 俺、くるみちゃんのためなら何ぼでも車出すけん。あれじゃったらその友達も一緒に乗してもええし」とか何とか言ったんだっけ。

(これ、よぉ考えてみたら結局鏡花(きょうか)を送るんもどのみち決定事項だったっ(ちゅ)うフラグじゃったわ)


『はぁ⁉︎ 恋愛偏差値男子中学生止まりのお兄ちゃんに彼女⁉︎ まぁ〜たそんな見栄張ってからに』

「見栄じゃねぇわ! ホンマにおるんじゃっちゃ! 嘘じゃと思うんなら今度会わしちゃるけん覚悟しとけ!」

(何を覚悟させるつもりだったんか、よぉ分からんけど)


 あの時の会話を頭の中で思い出して、自分の馬鹿さ加減を呪いたくなった実篤(さねあつ)だ。

(いや、あれはホンマ、クリスマス前で浮かれちょったし)


『その言葉忘れんさんなよ⁉︎』

 そう。
 そうして鏡花は、あの時そんな実篤(さねあつ)に対して、まるでアニメか漫画のモブ的悪役(ザコキャラ)みたいな捨て台詞を吐いて……。

『ほいじゃけど、送って行くんはお願いしたけんね⁉︎ うちの友達も凄く(ぶっ)可愛いけん、彼女おるくせに目移りしんさんなよ? バカ(にい)!』

「はぁ⁉︎ お前俺の彼女の可愛さ知らんけん、そんなアホなこと言――」

惚気(のろけ)は聞きとぉないけぇ、切りまぁ〜す! じゃぁーね! バイバイ!』

 そんな付け加えまでして、鏡花は実篤の言葉を(さえぎ)るように一方的に電話を切ったのだ。
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