社長さんの溺愛は、可愛いパン屋さんのチョココロネのお味⁉︎
 実篤(さねあつ)としては「俺の彼女の方が絶対可愛いけぇ死んでも目移りなんかせん!」と断言した後で電話を切られたかったのを覚えている。

(結局俺、あのあと年末年始のドタバタで鏡花(きょうか)に連絡するん、すっかり忘れちょって……。オマケにインフルまでやらかしたけん、何だかんだでアイツの頼み、突っぱね損ねたんよなぁ)

 そこまで思って、

(いや、マジな話、死んでも目移りなんかせん!って思うたけど、インフルで死にかけたわ……)

 なんて、頭の中で忙しくもどうでも良い付け加えまでしてしまう。


 とは言え、基本妹に甘々な実篤だ。
 忙しくなかろうが、寝込まないでいようが、きっと何だかんだで押し切られていたとは思うのだが――。

 それはさておき、鏡花の言った〝凄く(ぶっ)可愛い〟友達がくるみだったのは嬉しい誤算だった。

(そりゃ〜俺の彼女のくるみちゃんが〝死ぬほど可愛い〟ことを知らんじゃった鏡花が、友人のくるみちゃんの余りの可愛さに「目移りするな」と釘を刺したくなったんも無理はないよな。くるみちゃん、ホンマ凄く(ぶっ)可愛いけん♡)

 と、くるみにベタ惚れな実篤はある意味矛盾だらけなことを思って、ひとりニマニマして。



「お兄ちゃんをそんな《《気持ち悪い顔》》にする彼女に会えるん、楽しみじゃわぁー」

 直後、自分のそういうくるみ大好き・彼女自慢しまくりたい症候群な状態が、今回の家族大集合をもたらす羽目になったんじゃったと、鏡花の〝珍獣〟でも見るような目を見て思い出して、溜め息祭りに変わったのだった。
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