社長さんの溺愛は、可愛いパン屋さんのチョココロネのお味⁉︎
 そもそもそんなに疑うなら鏡花(きょうか)がくるみに電話して「うちのお兄ちゃんと付き合いよぉーるってホンマなん?」と聞けば良いだけの話ではないか。

 自分もだけど、くるみの仕事納めも明日なのだ。
 一足早く年末年始の休みに入った鏡花や八雲(やくも)や、――ましてや年金暮らしで毎日が休日な両親らと一緒にされては敵わない。

 実篤(さねあつ)なんかよりうんと朝が早いはずのくるみに、こんなワガママな打診をしてもええんじゃろうか?と迷いまくりの実篤に、くるみが助け舟を出してくれた。

『明日も仕事じゃけぇあんまり遅うはなれんですけど……そいでも良かったら是非』

「ホンマにええん?」

『ええも何も。結局あの日からうちら、会えちょらんのんですよ? 好きな人の顔が見たいって思うちょるんは、うちだけなん?』

 可愛らしくそんな風に言われた実篤は「俺も会いたいに決まっちょる!」と食い気味に答えていた。

 くるみが言うように、彼女に〝月のもの〟が来て何も出来ずに添い寝したあの泊まりの日からかれこれ一週間ちょっと。

 実篤がインフルになったり何だりでわざわざくるみが会社に来てくれる移動販売の日ですら会えなかった二人だ。

 実際、くるみロスでしんどいと思っていたところに、夕飯を一緒に……は――二人きりならば――言うことなしな、渡に船な提案だった。
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