社長さんの溺愛は、可愛いパン屋さんのチョココロネのお味⁉︎
***

 実篤(さねあつ)がくるみを迎えに行って、家に連れて帰った頃には、家族が全員家にそろっていた。


「うっそぉ〜! ホンマにくるみちゃんじゃん! お兄ちゃんの〝夢彼女〟じゃなかったぁぁぁ!」

 玄関扉を開けるなり、鏡花(きょうか)が失礼極まりない言葉を投げかけてくる。

 そんな鏡花の後ろ。玄関先には八雲(やくも)や両親まで出て来ていて、家族全員が揃い踏み。

「うっ」

 思わずその光景に圧倒されて、実篤は変な声が出てしまった。

 そんな実篤の横でくるみが「私が実篤さんの夢彼女……」とつぶやいて、まるでそれがツボにハマったみたいにクスクス笑う。

「くるみちゃぁ〜ん」

 実篤がそんなくるみを、情けない声を出して見つめるのを見て、鏡花は内心(このふたり、案外うまくいってる?)と思ったけれど悔しいので口には出さずにおいた。


「あー、この子のこと、俺、覚えとる! 父さんの不動産屋の近くにあった、あんぱんの旨いパン屋のばあちゃん(トコ)のお孫ちゃんじゃろ!」

 八雲のセリフに、その場にいた全員が「えっ⁉︎」と声を上げた。
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