社長さんの溺愛は、可愛いパン屋さんのチョココロネのお味⁉︎
「おじさま、うちのおばあちゃんのことご存知なんですか?」

「知っちょるも何も……よぉあんぱん買いに行きよったし。馬場のおばあちゃん、知恵袋が服着て歩きよぉーるよーな人じゃったけん、色々お知恵を拝借したりもしたよ?」

 そこまで言って、ふと思い出したように
「ところでくるみちゃん。おじさまじゃなんて杓子定規(しゃくしじょうぎ)な呼び方はくすぐったい(こそばゆい)けん、やめて? そぉじゃ! パパって呼んでくれたら滅茶苦茶(ぶちくそ)嬉しいんじゃけど」

 ウインクをして、ニコッと強面顔(こわもてがお)を緩める連史郎(れんしろう)に、ホワァ〜ッとくるみの表情がはにかんだように(ほころ)んだ。

 それを見て、実篤(さねあつ)が慌ててくるみを自分の方へ引き寄せる。

「バカ親父! 調子に乗り過ぎじゃ!」

「え? パパがダメなん? あっ! ひょっとして援交っぽいけん? それじゃあ(ほいじゃあ)蓮くんとかなら如何(いかが)わしゅうないけぇ()かろ?」

 息子の注意喚起なんてどこ吹く風。
 母親も八雲(やくも)たちもこれに関しては止める気なんてないみたいにみんな知らん顔で黙々とご飯を食べているのも腹立たしいと思ってしまった実篤だ。

「どっちもダメに決まっちょろーが!」

 実篤が吐き捨てるように言ったら、くるみが横で「お義父(とう)さまっ」とつぶやいて。

 これには、ビールをひとくち口に含んだばかりだった八雲がむせて、鍋から白菜を拾い上げた所だった鏡花(きょうか)菜箸(さいばし)を取り落とした。

 そんな中、ただ一人母・鈴子(すずこ)だけは
「まぁ、素敵っ。じゃあ、私のことはお義母(かあ)さまって呼んでね♥」
 などと言って、何故か連史郎に便乗して。

 ふたりして「娘が一人増えましたねー♥」と大喜びをする。
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