社長さんの溺愛は、可愛いパン屋さんのチョココロネのお味⁉︎
 当然のこと同年代の男たちも結構くるそうで、正直ソワソワと落ち着かない実篤(さねあつ)だ。

そんなに(そんとに)心配そうな顔せんで? うち、実篤さん一筋ですけぇ大丈夫よ?」

 まるで実篤の不安なんてお見通しみたいにクスッと笑うと、くるみが実篤に「ね?」と小首を傾げて。

 その余りの可愛さに、実篤はフニャリと相好を崩した。


「はいはい。くるみちゃんが可愛いけぇって気持ち悪い顔せんの!」

 と同時、すぐ横からニュッと顔を突き出してきた鏡花(いもうと)に、嫌ぁ〜なものを見た!という顔をされて、思いっきりダメ出しをされてしまう。

「ぐっ」

 人がせっかく愛しい恋人(くるみちゃん)との別れを惜しんでいるというのに、『空気ぐらい読め、バカ鏡花(きょうか)!』と【心の中で】言い返してはみたものの、口に出したら何倍にもなって返ってくるのを知っているので、喉の奥、カエルが潰れたみたいな声を出すに留めた実篤だ。
< 210 / 419 >

この作品をシェア

pagetop