社長さんの溺愛は、可愛いパン屋さんのチョココロネのお味⁉︎
(のっ、ノンアルコールって言う(っちゅう)より(みじこ)ぉーてええじゃん?)

 実際はそう意識している時点でダメなのだが、そこには敢えて目をつぶることにした。


「このホテルのラウンジにもモクテルあるんじゃろうか」

 わざとらしく〝モクテル〟を使って独りごちたところで、正面フロント内にいるスタッフと目が合って、実篤(さねあつ)は内心『見られちょった!』とドギマギした。

 ホテルに入るなり、どこに向かうわけでもなく、ロビーのど真ん中で迷子のようにスマホであれこれ検索していたら、確かに不審者ではないか。

 ましてや自分は自他共に認める強面顔(こわもてがお)だ。
 今日はスーツを着ていないから大丈夫だと思いたいが、もしかしたら堅気(カタギ)っぽく見えていない可能性だってある。



「あの、お尋ねしたいんですが……」

 結局その重圧に耐えられなくなった実篤は、フロントに近づくと、先程視線が絡んでしまったフロントマンに声を掛けた。
< 231 / 419 >

この作品をシェア

pagetop