社長さんの溺愛は、可愛いパン屋さんのチョココロネのお味⁉︎
 弟と妹に恋人を盗られたみたいに思ってムスくれているだなんて、絶対に言えるわけがない。

 なのに――。


「そりゃー可愛い彼女を独り占め出来んとあっちゃー、モヤモヤも募るいのぉー? 実篤(さねあつ)よ」

 父・連史郎(れんしろう)にぐりぐりと頭を撫でられて、実篤は(クソ親父! 要らんこと言わんでええ!)と思わずにはいられない。


「なになに~? お兄ちゃん、拗ね(はぶて)ちょるん?」

 そんな両親とのやり取りに、【くるみの手を握ったまま】鏡花(きょうか)がクスクス笑ってきて。

 実篤は(あいつ、くるみちゃんの手ぇ離さんの、絶対確信犯じゃろ!)と苦虫を嚙みつぶした。


「まぁな、父さんも母さんを独り占め出来んで悲しいけん、実篤兄ちゃんも一緒じゃと思うぞ? コイツは顔だけじゃのぉーて考え方も一番(いっちばん)父さんに似ちょるけんのぉー」

 はっはっは……と笑いながら、これまた要らんお世話な御託(ごたく)を並べる連史郎(れんしろう)を無言で睨んだら、

「やーんっ。貴方ったら♥ 照れるじゃないね」

 実篤を押し退けるようにして、鈴子(すずこ)が連史郎に熱い視線を送る。
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