社長さんの溺愛は、可愛いパン屋さんのチョココロネのお味⁉︎
 慌ててくるみの手を(ほど)いて両のポケットに手を入れて。
 中からコートの前を突っ張るように浮かせ気味にして誤魔化してはみたものの、その下で息子さんが半勃(はんだ)ちだと言ったらくるみは引いてしまうだろうか。

 それとも――。

 まぁさすがに喜ぶっちゅうことはないよな?と思って、実篤(さねあつ)は自分のお馬鹿な思考回路に思わず笑ってしまった。


「実篤さん?」

 いきなりククッと喉を鳴らして笑みを浮かべた実篤に、たまたま前から歩いてきた通行人が「ひっ」と悲鳴をあげて飛び退いて。

 くるみがそんな実篤を不思議そうな顔をして見上げてくる。

(可愛すぎかっ!)

 その顔があまりに愛らしくて、実篤の中のタガがプツンッと音を立てて切れたのが分かった。


「ごめん、くるみちゃん。俺、そろそろ限界かも知れん。ちょっとだけ車まで急いでも良い(ええ)?」

 少なくとも徒歩圏内には、入れそうなラブホテルはなかったから。
 車で移動して一番手近なホテルに飛び込むしかなさそうだ。


「えっ?」

 急にポケットから手を出して、くるみの手をギュッと握るなり足早に歩き出した実篤に、くるみは戸惑いながらも小走りで付き従って。

 慌てる余り足がもつれてつんのめりそうになる。

 そんなくるみを抱きとめた実篤が、小さく吐息を落としてくるみの耳元に唇を寄せた。

「急かしてごめんね。だけど(ほいじゃけど)俺、ちょっとでも()よぉ、くるみちゃんを抱きたいんよ……」
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