社長さんの溺愛は、可愛いパン屋さんのチョココロネのお味⁉︎
***
就業後にくるみと会う約束をした二月十四日。
実篤の仕事が終わったのは、定時を大幅に過ぎた二十時過ぎだった。
いくら繁忙期とは言え、実篤は従業員らにはあまり残業をさせたくないと思っている。
そもそも経理の野田には家庭があるし、総務の田岡と営業の井上には、各々ラブラブの恋人がいる。
ましてや今日はバレンタインデーだ。
自分のことをくるみが待ってくれているように、きっと田岡と井上にも恋人が待っているだろう。
「ホンマすみません」
三人が申し訳なさそうにペコペコと頭を下げるのを見て、「バカじゃのぉ、みんな。定時過ぎちょるんじゃけ、何を遠慮することがあるんよ」と言って笑顔で送り出した実篤だ。
「社長。俺、彼女もおらんですし、独り暮らしですけぇ最後まで付き合いますよ⁉︎」
彼女との結婚が秒読みらしい井上と同じく、営業をしてくれている宇佐川――前にくるみを狙っていたと暴露したことがある前科持ちの二十四歳――がそう言ってくれたけれど、彼にだけ残業をさせるわけにはいかないではないか。
「変な所で気ぃ遣わんでええよ。ホンマ、俺だけで大丈夫じゃけ、宇佐川くんも遠慮せんと早よ帰りんさい」
彼女がいなくたって、家へ帰ればそれなりにやることもあるだろう。
就業後にくるみと会う約束をした二月十四日。
実篤の仕事が終わったのは、定時を大幅に過ぎた二十時過ぎだった。
いくら繁忙期とは言え、実篤は従業員らにはあまり残業をさせたくないと思っている。
そもそも経理の野田には家庭があるし、総務の田岡と営業の井上には、各々ラブラブの恋人がいる。
ましてや今日はバレンタインデーだ。
自分のことをくるみが待ってくれているように、きっと田岡と井上にも恋人が待っているだろう。
「ホンマすみません」
三人が申し訳なさそうにペコペコと頭を下げるのを見て、「バカじゃのぉ、みんな。定時過ぎちょるんじゃけ、何を遠慮することがあるんよ」と言って笑顔で送り出した実篤だ。
「社長。俺、彼女もおらんですし、独り暮らしですけぇ最後まで付き合いますよ⁉︎」
彼女との結婚が秒読みらしい井上と同じく、営業をしてくれている宇佐川――前にくるみを狙っていたと暴露したことがある前科持ちの二十四歳――がそう言ってくれたけれど、彼にだけ残業をさせるわけにはいかないではないか。
「変な所で気ぃ遣わんでええよ。ホンマ、俺だけで大丈夫じゃけ、宇佐川くんも遠慮せんと早よ帰りんさい」
彼女がいなくたって、家へ帰ればそれなりにやることもあるだろう。