社長さんの溺愛は、可愛いパン屋さんのチョココロネのお味⁉︎
***
「これ、口に入れたらジュワッと甘いんが染み出してきてめちゃめちゃ美味しいですね」
くるみが実篤の目の前。うっとりと目尻を下げて、とても嬉しそうに口元を綻ばせている。
その笑顔が可愛すぎて、実篤はフォークにケーキを刺して持ち上げたまま思わず見惚れてしまった。
いま食べているババ・オ・リューム。
食べる直前にラム酒を回しかけるのは飲酒するアテがない人間に対してのみのサービスで、車に乗る予定がある客には煮切ってアルコール分を飛ばしたものを使用するらしい。
「そう言やぁ実篤さん、凄い飲んじょってように見えますけど大丈夫ですか?」
ぼぉっとくるみに魅入ったまま動かなくなってしまった実篤に、くるみはてっきり酔いが回ったと思ったようだ。
心配そうな顔をして実篤の方をじっと見つめてくる。
その視線にやたら照れてしまってタジタジの実篤だ。
「いやっ。全然酔うちょらんのよ。ただ……」
――滅茶苦茶緊張しちょるけん。
そう続けようとして「何に?」と問われたら絶体絶命のピンチだと訳の分からないことを思ってしまった実篤は、不自然に視線を揺らせてくるみに要らない心配をかけてしまう。
「今日の実篤さん、ずっと心ここにあらずな感じじゃったし、ひょっとしてどこか具合が悪いとかじゃ……」
そこでハッとしたように「もしかして今日予定より早よぉ帰れたんもそのせい?」とか言い始める始末。
「い、いやっ。違うんよ、くるみちゃん。『今日は用があるけぇ申し訳ないけど残業は出来ん』っちゅうたら……みんなが変に気ぃ遣ぉーてくれて。『じゃったら』って昼過ぎに追い出されただけなんよ。ホンマにそれだけじゃけ、信じて?」
「……それじゃったら尚のことどうしたん? 今日は迎えに来てくれた時から何か様子がおかしかったし……。お店へ入ってからは一層上の空じゃったじゃろ? うちがなんぼ美味しいねって言うても生返事ばっかりじゃったし」
そこで眉根を寄せたくるみから、「ひょっとして……うちとおるん、楽しゅうない?」と聞かれた実篤は、思わず手にしていたフォークを皿に取り落として「違っ!」と席を立ち上がってしまっていた。
途端周りの客の視線が一斉にこちらへ集中して、慌てて席に着き直して。
騒がして申し訳ないと周りに視線を流したら、皆実篤の顔を見るなり「ひっ」と悲鳴を上げて視線を逸らしてくれた。
脅すつもりなんて微塵もなかったし、申し訳なさが募った実篤だったけれど、今は正直ギャラリーのことなんてどうでもいい。
「ね、くるみ。そんなわけないって分かっちょるじゃろ? 俺はキミととおるんが一番楽しいし、何よりも幸せなんに。出来たらこのままずーっとずーっとくるみちゃんと一緒におりたいし、何なら死ぬまで一生キミの顔を見続けたいって思うちょる。朝もくるみちゃんの横で目覚めて夜もくるみちゃんの顔を見ながら眠りに就きたいんよ……。俺がどんだけキミのことを好きで好きでたまらんか分かっちょるくせに……俺の気持ちを勝手に否定せんで?」
「これ、口に入れたらジュワッと甘いんが染み出してきてめちゃめちゃ美味しいですね」
くるみが実篤の目の前。うっとりと目尻を下げて、とても嬉しそうに口元を綻ばせている。
その笑顔が可愛すぎて、実篤はフォークにケーキを刺して持ち上げたまま思わず見惚れてしまった。
いま食べているババ・オ・リューム。
食べる直前にラム酒を回しかけるのは飲酒するアテがない人間に対してのみのサービスで、車に乗る予定がある客には煮切ってアルコール分を飛ばしたものを使用するらしい。
「そう言やぁ実篤さん、凄い飲んじょってように見えますけど大丈夫ですか?」
ぼぉっとくるみに魅入ったまま動かなくなってしまった実篤に、くるみはてっきり酔いが回ったと思ったようだ。
心配そうな顔をして実篤の方をじっと見つめてくる。
その視線にやたら照れてしまってタジタジの実篤だ。
「いやっ。全然酔うちょらんのよ。ただ……」
――滅茶苦茶緊張しちょるけん。
そう続けようとして「何に?」と問われたら絶体絶命のピンチだと訳の分からないことを思ってしまった実篤は、不自然に視線を揺らせてくるみに要らない心配をかけてしまう。
「今日の実篤さん、ずっと心ここにあらずな感じじゃったし、ひょっとしてどこか具合が悪いとかじゃ……」
そこでハッとしたように「もしかして今日予定より早よぉ帰れたんもそのせい?」とか言い始める始末。
「い、いやっ。違うんよ、くるみちゃん。『今日は用があるけぇ申し訳ないけど残業は出来ん』っちゅうたら……みんなが変に気ぃ遣ぉーてくれて。『じゃったら』って昼過ぎに追い出されただけなんよ。ホンマにそれだけじゃけ、信じて?」
「……それじゃったら尚のことどうしたん? 今日は迎えに来てくれた時から何か様子がおかしかったし……。お店へ入ってからは一層上の空じゃったじゃろ? うちがなんぼ美味しいねって言うても生返事ばっかりじゃったし」
そこで眉根を寄せたくるみから、「ひょっとして……うちとおるん、楽しゅうない?」と聞かれた実篤は、思わず手にしていたフォークを皿に取り落として「違っ!」と席を立ち上がってしまっていた。
途端周りの客の視線が一斉にこちらへ集中して、慌てて席に着き直して。
騒がして申し訳ないと周りに視線を流したら、皆実篤の顔を見るなり「ひっ」と悲鳴を上げて視線を逸らしてくれた。
脅すつもりなんて微塵もなかったし、申し訳なさが募った実篤だったけれど、今は正直ギャラリーのことなんてどうでもいい。
「ね、くるみ。そんなわけないって分かっちょるじゃろ? 俺はキミととおるんが一番楽しいし、何よりも幸せなんに。出来たらこのままずーっとずーっとくるみちゃんと一緒におりたいし、何なら死ぬまで一生キミの顔を見続けたいって思うちょる。朝もくるみちゃんの横で目覚めて夜もくるみちゃんの顔を見ながら眠りに就きたいんよ……。俺がどんだけキミのことを好きで好きでたまらんか分かっちょるくせに……俺の気持ちを勝手に否定せんで?」