社長さんの溺愛は、可愛いパン屋さんのチョココロネのお味⁉︎
「……? ほいでって……何が?」
『――何がって……流れからいってくるみちゃんと【いつ】こっちへ報告しに来てくれるんか?っちゅー話以外なかろーが』
至極当然のように言い募ってきた連史郎に、実篤は「は? そんなにすぐすぐにはならんわ」と溜め息を落とす。
昔からそうなのだが、連史郎はとにかくせっかちな男なのだ。
『母さーん。実篤大丈夫じゃったらしいで? だけど【まだ心の準備が出来とらん】けぇこっちに来るんはすぐにはならんのじゃと!』
鈴子といい、連史郎といい、この二人には保留ボタンを押すとか通話口を押さえて話すとか言う感覚はないのだろうか。
連史郎が傍にいる鈴子に言っていると思しき言葉も、包み隠さずすべて実篤側に筒抜けで。
「ちょっ、待て、親父っ! 誰が心の準備が出来とらんっちゅーた!」
さすがの実篤も、そう突っ込まずにはいられなかった。だってそうでもしないと、何だか〝男の沽券〟に関わるではないか。
***
「もぉ、連史郎さん、最高じゃないですかっ」
両親との電話のことが――というより主に父からの暴言?が――忘れられなくて。
翌日クリノ不動産横の駐車場へパンの配達に来てくれたくるみのそばまでツツツツツ……と近付いてぼそりと愚痴ったら、目尻に涙を浮かべられて笑われてしまった。
父・連史郎を褒められるのが何となく面白くない実篤は、「くるみちゃんっ、笑いごとじゃないけぇ」とムスッとする。
ぼそぼそと、小声で互いのすぐ真横。
パンを選んでいる客たちには聞こえないぐらいの微かな声音で話している二人だ。
必然的に距離がグッと縮まって、止まり木に寄り添う小鳥みたいにくっつき合っている。
「きな粉フレークパンと、クリームパン、それから抹茶シフォンを一つずつ」
客が、棚に並ぶビニール袋で個包装された手こねパンそばに取り付けられた札を指さしながら注文するのに対応して、くるみが一つずつパンを棚から取り上げては平べったいカゴによけていく。
『――何がって……流れからいってくるみちゃんと【いつ】こっちへ報告しに来てくれるんか?っちゅー話以外なかろーが』
至極当然のように言い募ってきた連史郎に、実篤は「は? そんなにすぐすぐにはならんわ」と溜め息を落とす。
昔からそうなのだが、連史郎はとにかくせっかちな男なのだ。
『母さーん。実篤大丈夫じゃったらしいで? だけど【まだ心の準備が出来とらん】けぇこっちに来るんはすぐにはならんのじゃと!』
鈴子といい、連史郎といい、この二人には保留ボタンを押すとか通話口を押さえて話すとか言う感覚はないのだろうか。
連史郎が傍にいる鈴子に言っていると思しき言葉も、包み隠さずすべて実篤側に筒抜けで。
「ちょっ、待て、親父っ! 誰が心の準備が出来とらんっちゅーた!」
さすがの実篤も、そう突っ込まずにはいられなかった。だってそうでもしないと、何だか〝男の沽券〟に関わるではないか。
***
「もぉ、連史郎さん、最高じゃないですかっ」
両親との電話のことが――というより主に父からの暴言?が――忘れられなくて。
翌日クリノ不動産横の駐車場へパンの配達に来てくれたくるみのそばまでツツツツツ……と近付いてぼそりと愚痴ったら、目尻に涙を浮かべられて笑われてしまった。
父・連史郎を褒められるのが何となく面白くない実篤は、「くるみちゃんっ、笑いごとじゃないけぇ」とムスッとする。
ぼそぼそと、小声で互いのすぐ真横。
パンを選んでいる客たちには聞こえないぐらいの微かな声音で話している二人だ。
必然的に距離がグッと縮まって、止まり木に寄り添う小鳥みたいにくっつき合っている。
「きな粉フレークパンと、クリームパン、それから抹茶シフォンを一つずつ」
客が、棚に並ぶビニール袋で個包装された手こねパンそばに取り付けられた札を指さしながら注文するのに対応して、くるみが一つずつパンを棚から取り上げては平べったいカゴによけていく。