社長さんの溺愛は、可愛いパン屋さんのチョココロネのお味⁉︎
「これでお間違えないですか?」
くるみが客に確認を取った後のパンを、会計作業をしている彼女のそば。
実篤は『くるみの木』と言うロゴスタンプが捺されたマチ付きの茶色い紙袋へつぶさないよう丁寧に入れていきながら、笑顔で接客をするくるみの横顔を眺める。
最近ではくるみが駐車場へ来ている間は、こんな風に使い捨てのビニール手袋をして手伝っていたりする実篤だ。
最初のうちこそ「悪いです」とオロオロしていたくるみだったけれど、最近はこうやって二人で並んで作業するのを案外気に入ってくれたように見受けられる。
妻が夫を助けるのを「内助の功」とか「鶏鳴の助」とか言うらしいが、夫が妻を支えるのは何というのだろう。
そんなどうでもいいことを考えながらも、くるみの手伝いをするこの時間が嫌いじゃない実篤だ。
そもそも、元々実篤の本業は不動産屋。
接客ありきの仕事なのだから人と接するのはそんなに苦ではない。
ただ、自分が余り前に出ると客を怖がらせてしまうかもしれないので、あくまでも裏方。
くるみのサポートに徹することを心掛けている。
一旦客がはけたところでくるみがすぐ横に立つ実篤を振り仰いで、思い出したようにくすくす笑うから。
実篤は「くるみちゃん、笑いすぎ……」とつぶやいて小さく吐息を落とした。
くるみはそんな実篤の腕にそっと触れて「ごめんなさい」と謝ってはみたものの、やはりこらえきれないみたいに慌ててそっぽを向いて肩を震わせる。
その左手薬指にきらりと光る指輪を見て、実篤は切り出すなら今しかないと思ったのだ。
「ねぇ、くるみ。そんだけ笑ったんじゃけ、俺がヘタレじゃないって証明するんにも、もちろん協力してくれるいね?」
身体を屈めるようにしてくるみの耳元でわざと彼女を呼び捨てにして声を低めれば、くるみが真っ赤になって耳を押さえた。
その様が可愛くてふっと笑うと、実篤は満足して続ける。
「仕事が落ち着いたらさ、なるべく早めに親への報告がてら挨拶とか済ませたいんじゃけど……どうじゃろ?」
実篤の提案にくるみが照れ臭そうにコクッとうなずくのと、「あのぉー、辛子高菜パンとカボチャあんぱんを一つずつお願いします」と注文が入るのとがほぼ同時で。
くるみが気持ちを切り替えるみたいに元気よく「はーい」と答えて、この話は一旦終了になった。
くるみが客に確認を取った後のパンを、会計作業をしている彼女のそば。
実篤は『くるみの木』と言うロゴスタンプが捺されたマチ付きの茶色い紙袋へつぶさないよう丁寧に入れていきながら、笑顔で接客をするくるみの横顔を眺める。
最近ではくるみが駐車場へ来ている間は、こんな風に使い捨てのビニール手袋をして手伝っていたりする実篤だ。
最初のうちこそ「悪いです」とオロオロしていたくるみだったけれど、最近はこうやって二人で並んで作業するのを案外気に入ってくれたように見受けられる。
妻が夫を助けるのを「内助の功」とか「鶏鳴の助」とか言うらしいが、夫が妻を支えるのは何というのだろう。
そんなどうでもいいことを考えながらも、くるみの手伝いをするこの時間が嫌いじゃない実篤だ。
そもそも、元々実篤の本業は不動産屋。
接客ありきの仕事なのだから人と接するのはそんなに苦ではない。
ただ、自分が余り前に出ると客を怖がらせてしまうかもしれないので、あくまでも裏方。
くるみのサポートに徹することを心掛けている。
一旦客がはけたところでくるみがすぐ横に立つ実篤を振り仰いで、思い出したようにくすくす笑うから。
実篤は「くるみちゃん、笑いすぎ……」とつぶやいて小さく吐息を落とした。
くるみはそんな実篤の腕にそっと触れて「ごめんなさい」と謝ってはみたものの、やはりこらえきれないみたいに慌ててそっぽを向いて肩を震わせる。
その左手薬指にきらりと光る指輪を見て、実篤は切り出すなら今しかないと思ったのだ。
「ねぇ、くるみ。そんだけ笑ったんじゃけ、俺がヘタレじゃないって証明するんにも、もちろん協力してくれるいね?」
身体を屈めるようにしてくるみの耳元でわざと彼女を呼び捨てにして声を低めれば、くるみが真っ赤になって耳を押さえた。
その様が可愛くてふっと笑うと、実篤は満足して続ける。
「仕事が落ち着いたらさ、なるべく早めに親への報告がてら挨拶とか済ませたいんじゃけど……どうじゃろ?」
実篤の提案にくるみが照れ臭そうにコクッとうなずくのと、「あのぉー、辛子高菜パンとカボチャあんぱんを一つずつお願いします」と注文が入るのとがほぼ同時で。
くるみが気持ちを切り替えるみたいに元気よく「はーい」と答えて、この話は一旦終了になった。