社長さんの溺愛は、可愛いパン屋さんのチョココロネのお味⁉︎
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実篤の協力のお陰もあって、五月から本格的に暑くなる前――六月の終わりまで、『くるみの木』のメニューにブリオッシュを使ったマリトッツォが加わることになった。
冷蔵庫のない移動販売車『くるみの木号』では生クリームを扱うのは難しいと言う判断で、ふんわり甘さ控えめのホイップクリームが採用されたのだけれど。
シンプルにプレーンタイプのホイップクリームのみのもの以外にもバナナ、イチジク、干しブドウ、リンゴジャムと言った水分が少ない果物を入れたものや、ホイップクリームに抹茶やチョコレートを練り込んだものなど、数種類ずつを日替わりで選べるようにした。
その全種類をくるみと共に試食した実篤だったのだけれど。
「俺の口に合わせよったらどれもこれも甘うなくなりそうじゃけん、うちの従業員らにも食べてもろうて話聞いてみん?」
至極もっともな提案をした実篤に、「じゃけど……ご迷惑じゃないでしょうか」とくるみが言うから。
実篤はふふんと鼻を鳴らすと、「うちのメンバーが『くるみの木』のパンのファンなん、知っちょるじゃろ?」と笑い飛ばした。
中でもとりわけチョココロネは、実篤にとって思い入れのあるパンだから。
くるみがクリノ不動産横にパンを売りに来てくれるようになって以来、従業員たちに結構な頻度でそれを買ってはプレゼントしているのだけれど。
従業員らもそのことを楽しみにしてくれていて、週に一度は休憩時のおやつのお供はくるみの木のチョココロネ、というのが定番付いている。
善は急げ。パンの配達が全て終わった後、くるみにクリノ不動産まで来てもらった実篤は、くるみとともに従業員らにマリトッツォの開発に手を貸して欲しい旨を伝えて。
皆から二つ返事で「むしろ大歓迎です!」と言うお墨付きをもらった。
そんな風にしてみんなで試行錯誤しまくった新商品のマリトッツォが美味しくないわけがないのだ。
コンビニなどで買える、生クリーム入りのマリトッツォにも引けを取らない美味しさだとお客さんたちから褒めてもらえて、くるみはとても嬉しそうだった。
そんなくるみの様子を見るのが実篤は本当に大好きで。
「社長が木下さんを見よーる優しそうな目、嫌いじゃないです」
いつもは〝気持ち悪い顔〟と揶揄ってくる田岡や野田が、そんな風に言ってくれるのも心地よくて幸せだなと思った実篤だ。
実篤自身、繁忙期を終えて割とすぐくらいからくるみの家への引っ越し準備として実家にある荷物の整理を少しずつ開始しているし、そう言うことをしているとどうあってもくるみとの共同生活を夢想せずにはいられない。
嬉し恥ずかしな結婚生活へ向けて秒読みを開始した二人は、今まさに幸せの絶頂期。
実篤もくるみも、ずっとこんな穏やかな日が続けばいいと心から願っていたのだけれど――。
実篤の協力のお陰もあって、五月から本格的に暑くなる前――六月の終わりまで、『くるみの木』のメニューにブリオッシュを使ったマリトッツォが加わることになった。
冷蔵庫のない移動販売車『くるみの木号』では生クリームを扱うのは難しいと言う判断で、ふんわり甘さ控えめのホイップクリームが採用されたのだけれど。
シンプルにプレーンタイプのホイップクリームのみのもの以外にもバナナ、イチジク、干しブドウ、リンゴジャムと言った水分が少ない果物を入れたものや、ホイップクリームに抹茶やチョコレートを練り込んだものなど、数種類ずつを日替わりで選べるようにした。
その全種類をくるみと共に試食した実篤だったのだけれど。
「俺の口に合わせよったらどれもこれも甘うなくなりそうじゃけん、うちの従業員らにも食べてもろうて話聞いてみん?」
至極もっともな提案をした実篤に、「じゃけど……ご迷惑じゃないでしょうか」とくるみが言うから。
実篤はふふんと鼻を鳴らすと、「うちのメンバーが『くるみの木』のパンのファンなん、知っちょるじゃろ?」と笑い飛ばした。
中でもとりわけチョココロネは、実篤にとって思い入れのあるパンだから。
くるみがクリノ不動産横にパンを売りに来てくれるようになって以来、従業員たちに結構な頻度でそれを買ってはプレゼントしているのだけれど。
従業員らもそのことを楽しみにしてくれていて、週に一度は休憩時のおやつのお供はくるみの木のチョココロネ、というのが定番付いている。
善は急げ。パンの配達が全て終わった後、くるみにクリノ不動産まで来てもらった実篤は、くるみとともに従業員らにマリトッツォの開発に手を貸して欲しい旨を伝えて。
皆から二つ返事で「むしろ大歓迎です!」と言うお墨付きをもらった。
そんな風にしてみんなで試行錯誤しまくった新商品のマリトッツォが美味しくないわけがないのだ。
コンビニなどで買える、生クリーム入りのマリトッツォにも引けを取らない美味しさだとお客さんたちから褒めてもらえて、くるみはとても嬉しそうだった。
そんなくるみの様子を見るのが実篤は本当に大好きで。
「社長が木下さんを見よーる優しそうな目、嫌いじゃないです」
いつもは〝気持ち悪い顔〟と揶揄ってくる田岡や野田が、そんな風に言ってくれるのも心地よくて幸せだなと思った実篤だ。
実篤自身、繁忙期を終えて割とすぐくらいからくるみの家への引っ越し準備として実家にある荷物の整理を少しずつ開始しているし、そう言うことをしているとどうあってもくるみとの共同生活を夢想せずにはいられない。
嬉し恥ずかしな結婚生活へ向けて秒読みを開始した二人は、今まさに幸せの絶頂期。
実篤もくるみも、ずっとこんな穏やかな日が続けばいいと心から願っていたのだけれど――。