社長さんの溺愛は、可愛いパン屋さんのチョココロネのお味⁉︎
(俺があんまりゴテゴテしちょるのするん、似合わんしな)

 代わりに、くるみのものは大いに華やかでいい。
 愛しい彼女の小さくて愛らしい指には、ブーケみたいに華やかな指輪をはめたって絶対に似合うのだから。

 だけど自分はダメじゃろ、と自覚している実篤(さねあつ)だ。

 実篤は、それこそただの何の飾り気もないナットみたいなつるんとした銀色の輪っかでもいいと思っていたくらい。

 まぁ、くるみがどうしても二つ合わせたらハートになるデザインにしたいと愛くるしい目で《《うるん》》と見つめてきたからそこはグッとこらえて彼女の意に沿ったのだけれども。

「あのっ、はめてみてもええですか?」

 くるみが店員をキラキラした目で見詰めて。
 店員が「もちろんです」と答えるのを横目に実篤は何とも言えず幸せな気持ちになる。

 まぁ支払い自体、これを発注した際、とっくの昔に済ませてあるのだから駄目だと言われるはずもないのだけれど。

「実篤さん、……あの、お、お願いします」

 店員の言葉を聞くや否やくるみがソワソワした様子で自分の指輪と左手を実篤(こちら)の方へ差し出して来るから。

 実篤はくるみの華奢(きゃしゃ)な指先に、受け取ったばかりの指輪をそっと差し込んでやった。

 まるで結婚式での儀式みたいじゃわ、と思っていたら、くるみが「うちも……」と言って実篤のリングを指さしてくる。
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