社長さんの溺愛は、可愛いパン屋さんのチョココロネのお味⁉︎
***

「朝食は卵と高菜のサンドイッチで大丈夫(ええ)ですか?」

 実篤(さねあつ)が一緒に住むようになってから、くるみは自宅用に一斤余分に食パンを焼いてくれるようになった。

 今朝はそれを使ってサンドイッチを作ってくれるらしい。

 九月に入って一週間ばかりが過ぎ、実篤も転勤時期の繁忙期に入っている。

 今まで住んでいた由宇町(ゆうまち)より御庄(みしょう)からの方が、通勤にかかる時間が三分の一に抑えられて、ほんのちょっぴり気持ちにゆとりが出来ている実篤だ。

 とはいえ、今日は朝からあいにくの雨模様。
 岩国市はどうやら今日の夕方から夜にかけて、大型の台風十五号の通り道になるらしい。
 十五時(さんじ)辺りから暴風域に入るとの予報で、きっと大雨に見舞われている今朝は、道路もいつもより混雑しているだろう。

 こんな日は寄り道などせずまっすぐ会社へ向かいたい。

 そう思っていたら、「お弁当も作っちょきましたけぇ()かったら持って行ってください。おかず、殆どがお総菜パンの残りの具材なんじゃけど……卵焼きはちゃんと朝焼きましたけぇ」とくるみがお弁当箱をテーブルの上に載せてくれる。

 コンビニなどへ寄り道したり、昼食を食べに出掛けなくていいのはすごく助かる。

 そう、物凄く助かるのだけれど――。

「くるみちゃん、無理しちょらん?」

 どうあっても実篤と暮らすようになってからのくるみは、負担が増しているように思えて仕方がないのだ。
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