初恋は、君の涙に溶けていく

独特の静けさが漂う図書室の空間にカリカリと問題集を解くペンの音だけが響く。

受験を目前に控えたこの時期の図書室は、完全に自習室と化していて、図書閲覧用の座席のほとんどは、参考書と問題集を広げた三年生で埋まっている。

最近の放課後の時間は、私も図書室に通って勉強することにしていた。

「それで? 藤井八尋がどうしたって?」

ちょっと不機嫌っぽい口調で私に問いかけてきたのは、村瀬里穂〈ムラセ・リホ〉。
   
私と八尋みたいにずっと連続ではないけど、小学校時代からだいたい二年に一回のペースで同じクラスになっている昔からの友達だ。

今年は別々のクラスだけど、志望校が同じなので、ときどき一緒に勉強している。

と言っても里穂は成績優秀で模試の合格判定も楽勝でAだから、私が一方的に教えて貰っているだけなんだけど。
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