初恋は、君の涙に溶けていく
「…………そ、そんなはずないよ。私、振られたんだし」

いきなり何を言い出してるんだろう、里穂は?

八尋が、私を好き。

急にそんなことを言われたから、予想外過ぎて動揺する。

心臓が、とくん、と跳ねて鼓動が速くなっていく。

きっと今、私の頬は熱く火照っている。

冷たい夜風に撫でられて、そのことに気づく。

「そんなはずあるよ」

頭の良い人の考えてることって、本当に意味わかんない。

なんでそんな自信満々で、断言してるの?

私はちゃんと八尋の言葉で、彼女にできない、って言われたんだよ?

「……そんなはずないから」

もう一度、自分に言い聞かせるような気持ちで、言い返した。

< 19 / 35 >

この作品をシェア

pagetop