初恋は、君の涙に溶けていく
四月の日々は、あっという間に過ぎていった。

最初の二週間は新しい環境に慣れないでドタバタしている内にいつの間にか終わっていて、四月も三週目に入った頃、ようやく高校生活にも順応して、落ち着いた日常を過ごせるようになってきた。

 
 *****

四時限目が終了するチャイムがなって、苦手な数学の授業がやっと終わった。

先生が教室を出て行くのを見送ってから、バックから取り出したお弁当を持って、里穂の席に向かう。

「里穂、お弁当食べよ」

「おう。俺もう腹ぺこー」

という返事を返して来たのは、もちろん里穂じゃなくて、里穂の隣の席の村瀬和真〈ムラセ・カズマ〉君だ。

茶髪で背が高くて、見た目が派手な感じの男子。

和真君は慣れた感じで自分と里穂の机を連結させて、ついでに学食に行った子の席から椅子を借りてきて里穂の隣に並べる。

「ほい、七花ちゃんの席ね」

「あ、ありがとう」

お礼を言って座ると、和真君は私の向かい側に座って、机の上にコンビニの袋から取り出した総菜パンを並べだす。 

「あんた、また私達と一緒に食べるつもりなの?」

授業が終わってからも、ノートに何か書き込みをしていた里穂が顔を上げて和真君に冷たい視線を向ける。

「男子の所に行きなさいよ」

「え、いいじゃん。席移動するのめんどくさいし」

「じゃあご飯食べてる間、一言も喋らないでね。耳も塞いでて。あんたが女子の会話に参加するとかキモいから」

「そんな仲間はずれにするなよー」 

和真君は、里穂の厳しい注文にも全然めげずに包装を破ってパンを食べ始める。

「私達は女同士で食べたいのに、邪魔なのよ。あんたがいると」

「えー、七花ちゃん。俺って、邪魔?」

「うーん。どっちかというと従兄弟同士の間に、私がお邪魔してる気がしないでも……」

こっちに話をふられたから、そんな風に答えてみる。
そう。和真君は里穂の従兄弟なのだ。

住んでいる地域が違うから、中学は私達と別だったけど、たまたま従兄弟同士が同じ高校を受験して、しかも同じクラスになったらしい。

入学初日に里穂から(嫌そうに)紹介されて、私も結構、仲良くなった。

「七花ちゃんは全然邪魔じゃないから気にすんな?」  

「当たり前でしょ。邪魔なのはあんたよ」

里穂と和真君の息のあった(?)掛け合いはいつものことで、結局は、いつも三人でワイワイ話しながら、ご飯を食べるんだけど。

私の高校生活は、こんな風に賑やかに始まっている。
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