初恋は、君の涙に溶けていく
高校に入学してから、もうすぐ1ヶ月になる。

だけど、実は私はまだ八尋と一度も話をできてない。

八尋のいる特進科は教室が西校舎にあるから、東校舎に教室がある私とは、廊下ですれ違う機会すらなくて、全く会うきっかけが見つからないのだ。

特進科は普通科よりも授業数が多いし、毎日一時限目の前にテストの時間があるだとか、普通科とはカリキュラムがぜんぜん違うらしいから登下校の時間も合わないし。

振られた気まずさと受験勉強の忙しさで、失恋した後の中学生活の残りの時間は、八尋と過ごす時間はほとんど無かったから、もう何ヶ月も八尋とちゃんと会話をしていない気がする。

卒業式の日に、色んな女子から一緒に記念撮影を頼まれてる八尋の姿に嫉妬して、私も勢いに任せて八尋の所に行って写真を撮ってもらったけど。

まともに顔を合わせられたのはその時くらいで、私と八尋の関係は友達にすら戻れていないまんまだ。

八尋に会いたいな。

入学式の時に遠くから見た八尋は髪が少し長くなっていて、また格好良くなっていた。

周りの女子の目がハートになっているのは、いつものことで。

私はそれを遠くから眺めているだけだった。

せっかく勉強がんばって同じ高校に来たのに。

八尋との距離はどんどん離れていくみたいで、悲しい。
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