初恋は、君の涙に溶けていく
放課後になって、私は行くあても無いまま、校舎の中をぶらぶらと歩いている。

本当は、部活もやってないし、授業が終わったら、もう帰るだけなんだけど。

別にこの後、特に校内で何か特別な予定がある訳でもないし。

ただ、なんとなくまだ帰りたくなくて。

廊下を東校舎の端っこまで歩いて、窓から対面する西校舎を眺める。

この位置からは見えないけど、西校舎の教室の中ではまだ特進科が授業をやっているはずだ。

八尋がまだ校内にいるのに、さっさと帰ってしまうと、ますます距離が離れてしまう。

心の中にそんな焦りがあって、毎日、意味もなく校舎の中をうろうろしてる。

だけど、特進科の授業が終わるまで待って、八尋に会う勇気もない。

失恋した私が待ち伏せみたいな真似をしてまで、校舎の違う八尋に会いに行っても、ストーカーみたいだし。

もう一回、告白する訳でも無いのに、わざわざ会いに行っても、何を話せばいいのかわからない。

だから、結局、校内をウロウロとさ迷ったり、時々、窓から西校舎を眺めに行ったりするだけで、特進科の授業が終わる前には帰る、というのが私の日課になっていた。
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