初恋は、君の涙に溶けていく
「校門を出た所でバスの中に七花がいるのが見えたからね、慌てて飛び乗ったんだ」
「ふーん。八尋は昔から目が良かったもんね、都会育ちなのに」
「それは都会育ちに対する偏見じゃない?」
「そうかなー? 都会の人はみんな視力悪いイメージだけど」
ゆっくりと走り出したバスの中で、私と八尋は他愛のない会話を交わしている。
久しぶりに八尋と話せてるのが嬉しすぎて、私は会話が途切れないように、次から次に話題を引っ張り出して喋りまくってる。
内容は、同じ中学出身の人の近況とか、購買部で売ってるジュースで一番美味しいのはどれか、とかくだらないことばっかりなんだけど。
八尋は、にこにこと私の話を聴いてくれてる。
私と八尋は、親友だった頃みたいにちゃんと普通に話せてる。
ううん。
やっぱり普通じゃない。
だって、私は幸せすぎて天国にいるみたいな気分になってる。
昔からこうだったっけ?
八尋とお喋りするのは、いつだって楽しかったけど、こんなにも幸せだった?
八尋と話をしてるだけなのに、幸せすぎて胸が締め付けられるだとか、息が苦しいだとか、思ってたっけ?
久しぶりだからなのかな。
ずっとずっと会いたかったからかな?
私が、八尋に失恋する前よりも、ずっとずっと八尋のことを好きになってるからなのかな?