恋と旧懐~兎な彼と1人の女の子~
最後に時計を見てから30分ほど経過した頃。
俺はぱちりとすっきり目を開けた。
まだ,頭がくらくらする。
と思いながら,不安定な自分の頭に気がついた。
「……愛深? あーそっか。俺,変なこと言ったりしたりしてない?」
視線をあげると,自分がそうしたくせに愛深の顔があって,つい怪訝に思う。
尋ねながら自分でも振り返って,俺は状況を確認した。
「してないよ」
「…そ。ってゆーか俺,1人で男の家に行くなって言わなかった?」
「言われたけど,暁くんもだめなんて思わなかったから」
「何かあったらどうするの」
「何かって? それに,暁くんはひどいことしないし,暁くんにされて怒るようなこと,この世にあんまり存在しないと思うんだけど」
「……もういい」
俺は,一向に態度を変えない愛深に呆れて,追求するのを止めた。
何をどう信用したら,俺にこんな返しをしてくるんだろう。
こんなのは全部不毛で,最後には負けてしまう未来が見えた。