恋と旧懐~兎な彼と1人の女の子~
「愛深が,空が好きだと言ったとき。同じことを思う人間がいたんだって驚いた。変化が怖いから空が好きなんて。母さんが変わっていくのを棒立ちして見てた俺は,いつもそう思いながら空を見上げていたから」

「だから,あの時」



こくりと頷く。

見上げたあの日々を思い出しながら。



「そうだよ。かっこ悪いとこ見せて,ごめん」



言えるはずも見せられるはずもなかったのに。

愛深はずっと,何も見せない俺の近くを望んでくれた。

だから謝ることになっても,全て話してしまった。

隣で,両手に力を込めた愛深。

バチッと,真っ直ぐに合った瞳は,確かに怒っていた。

俺は思わず息をとめて,僅かに瞳を見開く。



「暁くんがかっこ悪かったことなんて,1度もない! 仮にかっこ悪かったとしても,別に普通だよ。謝ることなんか,1個もない!」



気落ちしている人間を怒鳴り付ける人間がいるなんて,知らなかった。

でも俺は,その瞳から目を逸らそうとは思えなくて。

ただ,俺のために怒る愛深を前に,呆気に取られた。

愛深は,止まらない。
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