恋と旧懐~兎な彼と1人の女の子~
たまには
約束の土曜日。
俺はのそりとベッドから体を起こして,支度を始めた。
自分専用のタンスから,少し逡巡した後,服を選び取る。
薄い白のパーカーに,藍色の長ズボン。
ついでに,お情け程度に髪をとく。
わざわざ格好を気にするのもバカらしく思えて,俺はそこでまた,ベッドに横になった。
けれど,1人で俺を待つ愛深の顔が浮かんで。
早く来ているような気がして。
俺は仕方なく,と何度も銘打って,家を出た。
いってきます,なんて声をかける相手もいない。
合流場所まで電車で1駅。
住む市の違う愛深とは,効率を考えて現地集合。
近すぎて,本当に一瞬でついてしまう。
時計を見ると,約束の時間まで35分も早かった。