恋と旧懐~兎な彼と1人の女の子~
俺が2人を,というより愛深を見ていることに気がついたのか,愛深の言葉は少しずつ少なくなっていった。

じんわりと愛深の耳が染まっていって,俺はそれを不思議だと思いながら更に眺める。



「なに?」



確認しようとしたのか,愛深は後ろをチラ見して。

愛深を見ていた俺の目は,愛深のそれと絡まった。




「唯兎と愛深なんかあったん?」

「ふぁ!? んへ!?」

「なにそれ」



突然の質問に,大袈裟に肩を揺らす愛深。

俺は特に反応を返さず,相手は部外者だと興味もない。

驚きとなんでとへ? が混ざりあった結果なんだろう愛深の反応にだけ小さく笑みを浮かべる。



「な,なにもないけど……なんで?」

「だってなんか変じゃん? お前ら。俺たまに唯兎のクラスの前通ってたんだけどさ,愛深可愛いし楽しそうだなって思ってたわけ」

「かっ……別に,可愛くないし」



フイッと顔をそらして必死に取り繕おうとしてるのに,照れが上回るのか舌が回ってない。

素直に照れてしまうその反応は,十分可愛いに入ると思う。



「何変な顔してんの? でもさ,なんか今の愛深は唯兎を過剰に意識してる気がする」



愛深愛深って,弘以上にムカつくのは何でなんだろう。

勝手に詮索されるのも,嫌だ。
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