恋と旧懐~兎な彼と1人の女の子~
「さあ?」



言った後,バッと勢いよく振り返った愛深。

そしてキョロキョロとした愛深に,空席になった俺の隣の後ろのやつも反応した。

何かのあったかと俺も不思議に思えば



「今なんか言った?」



愛深はおかしな事を言う。

でもいつも唐突な愛深が普通であることの方が少ないので,俺は直ぐに興味を失う。



「いや怖ぇこと言うなよ」



けれど,おばけでも出たかと勘違いしている健は,嫌そうに眉を寄せた。



「そう?」



なのに愛深が至って真面目に返すから,その怯えた態度は更に大きくなって。



「そ…ううぇ……お前,マジでそれ止めろ。首しまるしビックリすんだろ」

「知らない……っていうかさっきからうるさい」



俺は小気味良く思いながら,適当に返した。



「あーハイハイ。ふっ……なぁ愛深ぃ」

「……ころすよ?」



見せつけるように近づく健に,俺はぼそりと不満を溢す。


小声で争う俺達を見て,愛深は苦笑していた。

集会が終わると,少し固くなった腰をあげて



「俺らこんときだけ隊長だぜ? ダブル隊長ううぇぇい」



そんな風にばかな事を言う健を急かしながら教室に戻る。

そして,クラスメート全員+担任の自己紹介と言う慣例の授業をこなすと,扉をノックする音がした。



「お? 入れ」



担任となった若い男の先生が,驚きもせず,心得ていたように言う。
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