恋と旧懐~兎な彼と1人の女の子~
ピン…?

差し出されたものをじっと見ると,それは明らかに女性層を狙った可愛めのデザインがされたピンだった。

3つついているうちの1つを指され,返答を予測しながらも



「…他のは?」


と尋ねる。

するとやっぱり



「私が使うから大丈夫だよ? もともと欲しいと思ってて,3つもいらないから」



なんて愛深は無邪気に笑った。

裏も何もない。

どうゆうことか,分かってんの?

後から困るのは自分のくせに。



「…そ」



弘だけは面倒だなと思いながら,愛深から商品を奪い,レジへ向かう。

愛深に悪気が無いのは分かってるし,まぁいいか。

コンビニでの件も差し引いたら,安いもの。

俺の行動を察して,愛深が後から騒ぎ出す。



「ちょっ,いいよ暁くん! 自分で払うから」

「すみませんこれ1つで」


自分の身長が高いことを利用して,俺はさっさと会計を済ませた。

心得たように笑う店員の視線にも澄まして応え,商品を貰う。

どうせもう会うこともないから。



「袋はどうなさいますか?」

「そのままで下さい」



俺は裸のままの商品を受け取って,早足で出口へ向かった。
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