恋と旧懐~兎な彼と1人の女の子~
俺は目を丸くして,言うこともないのに声をあげそうになった。
まだ何も言ってないのに。
と,何一つ検討していなかったくせして,俺は何故か不愉快な気持ちになる。
「自分で言って落ち込むな」
「だって出掛けてみたいんだもん」
目の前で繰り広げられる仲の良さそうな会話。
いつまで2人でしゃべってんの……
いや,別に良いけど。
俺は人知れず何かに言い訳をした。
そしてそれは丁度愛深がぽうっと空中に視線を向けたとき。
「別に…2人でも良いけど。タダになるなら,いないと思えば同じだし…」
俺はそんなことを口走っていた。
ボソッと,聞こえるかも怪しい呟き。
血迷ったのかと聞かれれば,俺は直ぐにそうだと答える。
「え! 本当!?」
愛深はあからさまなほどテンションの高い声を出して,俺はしまったと思う。
そして愛深の満面の笑みを見て,もう取り下げられないことを悟った。