恋と旧懐~兎な彼と1人の女の子~
戻るに戻れないまま,昼休みが過ぎて。

戻った時には,弘に睨まれた。



「何してんだよ,唯兎。愛深,泣きそうな顔して,可哀想だった」



そう言われると,バツが悪い。

一方的に避けた自覚くらい,ちゃんとある。

でも,弘の事だから。

代わりに上手く慰めたんだって,想像がつく。



「説明するか,謝るか。どっちかだけでもちゃんとしろ」



甘えるなと,言われていた。

弘は俺の方が付き合いは長いけど,いつだって正しい方の味方だから。

泣きそうで,可哀想。

そんな愛深は,案外容易く想像がついて。

じわりと胸に何かが広がる。

どんどん侵食していくその感情は大きくなって。



「ごめん弘,先帰ってて」

「おー,ちゃんと仲直りしろよ」



余計なお世話。

そんな減らず口をたたく程の余裕は無かった。

放課後にもなると,下らない意地は無くなって。

言い様の無い焦りに変わっていた。
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