恋と旧懐~兎な彼と1人の女の子~

そんなに寂しいなら

ーゴッゴッドドドズゾー

愛深と2人並ぶ電車の中。

席は満員で,俺達は出入口横のバーにつかまって立っていた。



「あのさ,暁くん。興味ないかもしれないけど,聞いてくれる?」



突然ふられた話。



「話したいんでしょ。いいよ,別に」



温かくも冷たくもない反応に,愛深は気にしない。



「伊希の,彼女の話なんだけど。あの子はね,私の憧れなの! 何でって言われても分かんないけど,本当に大好きなの」



俺との話で,何か思い出したんだろう。

嬉しいのか幸せなのか,辛いのか。

諦めなれた愛深の表情から本音を取り出すのは,簡単じゃない。




「お茶目で可愛くて,勉強もできて,優しくて」



明るいまま,最後に落ちる暗い言葉。



「私は,大好きだったの」
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