恋と旧懐~兎な彼と1人の女の子~
電車だからか,遠慮した静かな呟きで話していく愛深。
それは次第に哀しみを帯びていき
「でもさ,好意を渡せたり,受け取って貰えたりする関係って,続かないときもあるじゃんね。私は今も好きだし憧れだけど」
繋ぎ止めたかった思いが,届いてくる。
全部,前向きを装った悲観的な愛深の,勘違いだったらいいのに。
「それが,美愛ちゃんを諦められない私は,当たり前なのにすごく哀しくて,悲しかったの」
だけど,今交流の無いらしいその友達に今すぐ確認する術はない。
話し終えて,締め方に困るように視線を散らばせる愛深。
だったら,どうせ他にいないなら。
そんなに寂しいのなら。
それは,これ以上考えちゃ行けない思考だ。
だけど,愛深が今,俺にこんな話をする理由。
自分で気付いているのかすら定かじゃないけど。
離れていかないで……
そう,何よりも大きく聞こえた。