恋と旧懐~兎な彼と1人の女の子~
いつも受け身で,引目で。

傷つく準備みたいに,受け入れられなくても笑えるように。

そんな性格が,こんなところにも繋がっている。

なんて,ムカつく話なんだろう。

だったらいつかきっと,俺のことまで愛深の傷になるんだって……

俺がいつか,最終判断で突き放した時。

愛深は自分だから仕方ないって,変な捉え方をしそうだって。

そう考えてしまう。

あんなやつの,せいで。



「ちがうよ。それは愛深がいけなかったんじゃなくて,そこが愛深の居場所じゃなかっただけでしょ? だから,愛深はここに居たらいんだよ」



感情を殺したまま言ってしまって,迂闊だったと気付く。

嬉しそうに,愛深は笑った。

気付かなくていいことにまで,気付いてしまう。

俺に好きだと言ったときも,デートとは言わず出掛けたいと言ったときも。

最後にはいつも諦めるつもりのくせに,未だ一緒にいることを選んでいる愛深。

愛深のすきを疑ったことなんてないけど。

出来れば諦めたくないって言う気持ちが,愛深を動かしてるなんて。

そんな恥ずかしいこと,愛深本人にも気付かれたくない。



「うん。ありがとう」



……。

俺は眉を寄せて,愛深を見た。

なら,これからも頑張れる。

そんな風に,前向きに諦めた声だった。

顔だけは本当に嬉しそうだから,余計にアンバランスに見える。
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