恋と旧懐~兎な彼と1人の女の子~
笑顔の方が,まだまし
「こっち見んなよ キモい」
そんな小馬鹿にした声が聞こえたのは,翌日のこと。
癪になって見ると,その前にいるのはまさかの愛深で。
俺の不機嫌な顔がさらに濃くなる。
「見えないから」
俺に向けられることなんてない,無表情な顔。
どれだけの感情をしまってるんだろう。
無機質な声も,愛深を知っている人間からしたら,痛々しいだけなのに。
ムカつく奴でも見るように,昨日と全く同じ奴が愛深すれすれに去っていく。
どこまでも一方的で,逆に愛深の方が引き留めるように振り返る。
何を言う機会も無かった愛深は,泣けない瞳を暗くして。
1人唇を結んでいた。