恋と旧懐~兎な彼と1人の女の子~
俺がいい人過ぎるのかな。
まず浮かんだのは,そんな傲慢な考え。
自分でもうすら寒くて,すぐに否定した。
だってきっと。
他の女子が同じようにされてても,興味なんて直ぐになくなる。
じゃあ,なんでなんだろ?
考えてる間にあの……
誰だっけ? まぁそいつが愛深からさらに見えなくなるまで離れていくのが分かった。
なんとなく男の後を追う。
考えが纏まってないのに,勝手に消えようとしないでくれない。
「ねぇ,待ってよ」
「? 何」
声をかけると意外に普通の反応だった。
あぁ。
愛深が,普段は普通,とか言ってたっけ。
「あのさ,愛深のこと,いじめないでくれる?」
せっかく普段は楽しそうなんだよ。
あんな顔より,笑顔のがましに決まってる。
「は? お前みたいな人気者がなんであいつなんか気にすんの? ってゆーかいじめてねぇし」
俺のこと,知ってるの。
今に始まったことじゃないけど。
愛深のことちゃんと評価できないような人間に,俺だけそう言われるのは鳥肌がたつ。
「じゃあ暴言吐いたりしないでくれる? ほんと稚拙だよね」
「はあ? そもそもなんでそんなこと言われなきゃいけないんだよ」
なんで……
そんなの,俺が知りたいくらい。
そんなの,俺が知るわけないでしょ?
こいつ,バカなのかな。
……あ,分かった。