恋と旧懐~兎な彼と1人の女の子~
「暁くん! あのね!」

「うるさい」



愛深のやって来るお昼休み。

いつにも増してパワフルな愛深に,俺は耳をふさいだ。

顔を歪めて見せると,愛深はおっとっとと勢いを弱め,目を泳がせる。

そして息をはくと,また吸った。

仕切り直しと緊張ぎみに伝えられたのは



「あの,クリスマス,空いてますか?」



クリスマスの誘い。

恥じらいのせいで全く似合わない謎の敬語に,俺は愛深をじっとみる。

くりすます,もうそんな季節。

なら,そのつぎに来るのは冬休みか。

なんて考えている間は,もちろん愛深を待たせているままで。

愛深は恥ずかしいのにどこにもいけない,居心地悪そうな表情をしていた。



「……どっち?」

「え?」

「イブかそうじゃないか」



そんなの



「来てくれるならどっちでもいい」



別にクリスマスである必要もないと思わせる,大輪の花のような笑顔。

そうゆう笑顔の出来る人間が,少しだけ羨ましい。



「じゃあクリスマスで。また弘んとこ召集かかってるからイブは無理。クリスマスも3時から6時までになるけど」

「来てくれるの!? 全然! それでいいよ!」

「どこに行きたいの?」

「んー。考えてなかった」



愛深らしいと思う。

また意図せず口が上がっていて,俺は手で下に押さえた。

連想するように考え続けている愛深。




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