恋と旧懐~兎な彼と1人の女の子~
「さっそく行く?」



いつまでもここにいられないと,俺は尋ねる。



「うん!」



すると,愛深は素直に肯首した。

駅から直ぐのお店に向かう。



「どれ食べたいの?」



俺がそう声をかける程に,愛深は難しい顔でそのベーグルを眺めていた。

ついてからずっと悩んでいる愛深はパッと俺を見る。



「あっごめんね。暁くんはちなみに何にしたの?」

「まだ決めてない。で,どれで悩んでるの?」

「いちごと抹茶とピスタチオとチョコとカフェオレ」



計5個。

個数的に問題はないと判断して,俺は1つ頷いた。



「じゃあ全部買うよ」

「え!? 私そんなにたべれな…」

「俺も半分食べる。じゃ,割り勘で」

「いいの!? ありがとう!」

「別に,どれでも良かっただけだから」



最後の一文は,言い訳のようになってしまう。

それでもにこにこと笑う愛深に,それ以上は黙することにした。
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