恋と旧懐~兎な彼と1人の女の子~
愛深はもう俺達のことはそっちのけで,納得したり考えたり,百面相。
そのせいで,俺が相手をしなくちゃいけない。
「無理。俺は行くって決めたし,そもそも宮崎は愛深に誘われてない」
たった今思い出した名前を呼びながら強く言うとどちらも離れていく。
はぁとため息を吐いて頬杖を付直すと
「あ……ぅぅ」
「おい,おい唯兎。見ろ,愛深真っ赤だぞ」
変な唸り声の愛深と,呼び掛ける弘の声。
今度は何。
と,俺はふっとその方向をみた。
そして,その光景に目を丸くする。
「は、なん……で」
そんな顔,赤いの。
そこに居たのは,下手くそに顔を隠しながら弘を見上げる,顔の赤い愛深。
意味が分からない。
ってか,なんで。
誰が……
「ごっごめ,変な反応して……ちょっとビックリしただけだから」
舌ったらずの愛深が,必死にしゃべる。
どう考えても俺に話していて,ますます意味が分からない。