恋と旧懐~兎な彼と1人の女の子~
「そうか,愛深は弘ちゃんも知ってるのか」

「友達です。暁くんも」



どんだけ引きずってんの。

そう思わずにはいられない程のスピードで,入ってきて直ぐの訂正をいれる愛深。

それがいくら余計なお世話でも,誰のためかなんて分かりきっている。

初めて食べたベーグルは,思いの外美味しかった。

愛深から名前を聞いたとき,ドーナツ状であること以外浮かばなかったことが残念なくらい。



「友達? 付き合ってんじゃないの? クリスマスにデートしてるのに?」

「……付き合ってない」



矢島のおっさんの質問は,黙々と食べていた俺にも飛んできて。

事実だけを完結に返す。



「あっあの,暁くんは誘ったらたまたま来てくれただけで……」

「たまたま? お前そんな人間じゃ……あー,そういうこと。いいなぁ若いって」

「うるさい。おっさんが女の子と出掛けたがってたって奥さんに言うよ」

「おまっそんな意味じゃねぇよ。ふざけんな分かってんだろ」



奥さんの尻にしかれてるおっさんの言葉なんて,何一つ刺さらない。

余計なことをいうな,考えるなと,俺はそれだけ。
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