恋と旧懐~兎な彼と1人の女の子~
「じゃあな。愛深,またいつでも来い。唯兎も。唯兎には出さねぇけど愛深には菓子くらい出してやるから」

「ふふっ。はい,また来ます」

「いやだめでしょ。何軽々しく頷いてんの。怪しいおっさんに騙されちゃだめ」



警戒心がないのと人懐っこいのは,せめてどちらかにして欲しいと思う。

こんな居酒屋に,いつどんな理由で来ようって言うのか。



「お前連れてきといてそれは」

「矢島のおっさんも,若い子ナンパしようとしてたってチクっとくから」

「は!? ふざけんなおま」



もう全部言ってやる。

それくらいの気持ちで凄んだ。

その間,愛深は律儀に後ろで待っている。



「来るなら俺とにしてね」



移動しながら小さく呟けば



「分かった」



しっかり耳に拾った愛深は,同じく小さな呟きで返した。
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