恋と旧懐~兎な彼と1人の女の子~
「あと2時間どうする?」

「んー待って。あっゲーセンが近い。行ったことある?」

「知らないからない」



広い道とはいえ,俯いて歩く愛深が危なく思えて。

代わりの目になってあげるのも,そろそろ疲れてきて。

尋ねた愛深は,ぱっと顔をあげた。

俺の言葉にじゃあ,と口にした愛深によって,同じ方向へと身体を向ける。






「それ,どうするの?」




そうなる前にどうにかするのを忘れていたのか,目の前には呆れるほどクレーンゲームの景品を抱えている愛深。

中には明らかに愛深の趣味じゃないものまである。



「えーと,食べる? かな。あとは飾ったり人にあげたり」

「何でそんな曖昧?」

「取る方がメインだから」

「意味分かんない」



お金払って取った景品も,いらないからあげるなんて。

そもそもいらないなら,意味ないんじゃない?

なんて,1度もやったことがない俺には,あまり言えたことじゃないけど。
 
ゲーセンに来てから早数十分。

愛深の手には箱のグミがあるし見たこともないアニメのフィギュアなんかもある。

それからまたその他諸々があって,もうそれがなんなのか一々目で確認するのもめんどくさい。



「取り敢えず袋貰ってくるから」

「あはは……ありがとう」



俺は先に愛深に断ってから,袋を見かけた辺りに一人歩いた。
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